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​【「天狗萌葱雅」編】

五右衛門から「炎を使う能力を持った妖染」の情報を得た次郎吉たちは、

その持ち主だと言われる大名・七条氏のもとへ向かうこととなった。

しかしその道中に立ち寄った国の大名、天下七柱の一人・羽田野千歳(はたの せんざい)から宣戦布告を受けてしまう。

羽田野氏によって関所が塞がれ、国から出ることも叶わなくなった次郎吉たちは、やむを得ず羽田野氏の居城へ盗みに入ることにしたがーーーー

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羽田野氏の城へ乗り込んだ次郎吉たちだったが、案の定そこには羽田野千歳・鈍鉄常の二人が待ち構えていた。

戦うことになった次郎吉たちだったが、神通力を扱う二人の妖染「天狗萌葱雅(てんぐもえぎのみやび)」と「烏天狗矢絣十六夜(からすてんぐやがすりのいざよい)」に苦戦を強いられる。

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そんな時、城の中から聞こえた叫び声で状況は一変する。

​「謀反!!鈴鹿(すずか)殿謀反なりーーーーーーー!!」

羽田野家家臣・鈴鹿氏による謀反である。

次郎吉たちが城へ侵入したことによる混乱に乗じて起こされたと思われるそれは、羽田野氏だけでなく次郎吉たちをも困惑させるのに十分であった。

​火鼠討伐どころではなくなった羽田野・鈍の両名と次郎吉たちは、共に鈴鹿氏の手の者に狙われることになってしまう。

​そして、鈴鹿氏の謀反を知った羽田野氏の様子が尋常ではないことに次郎吉たちも気づく。

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​20年前ーーーーーーー

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かつてこの国を治めていたのは大黒(だいこく)氏という大名であった。

 

しかし、大国氏は私腹を肥やすため民に重税をかけたり、気に入らない家臣の家を何かと理由をつけて取り潰すなど悪政を敷いていた。

大黒氏に仕える一門だった羽田野氏は、国の未来を考え謀反を起こすという決断を下した。

 

それが、羽田野千歳の父であった。

羽田野氏は見事大黒氏を討ち取り、新たな国主となった。

大黒氏の悪政に不満を持つ者も多かったため羽田野氏が受け入れられるのはそう難しいことではなかった。大黒氏の奥方と嫡男は、大黒氏の討死からすぐ自害したとされている。

 

しかし、あくまで「表向きには」である。

 

大黒氏の嫡男と、羽田野氏の嫡男は同じ乳母のもとで育ち大層仲が良かったのだ。大黒氏の嫡男は、羽田野氏の嫡男の懇願で、名を変え羽田野氏と懇意であった鈍家に養子として迎え入れられていたのだ。

もちろん、他の家臣団の者たちが気づかないわけがない。

さらには、羽田野の当主が代替わりした途端、そば近くに置かれるようになったため、かつて大黒氏の嫡男だった男は「腹を切る覚悟もできぬ腑抜け」「周りから白い目で見られても平気でいる面の皮の厚い男」などと噂されていた。

それでも、今では「鈍鉄常」となったその男は、何事もないように、かつては家臣だった男に献身的に仕えるのだった。

むしろ、鉄常を見て時折辛そうな顔をするのは、羽田野家の当主となった千歳のほうであった。

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そして現在。

羽田野氏たちと次郎吉たちの前に、ついに首謀者の鈴鹿氏が迫ってきた。

彼が所有していた「夜雀鳴散紅紫(よすずめなきちるべにむらさき)」の視界を奪う能力に苦戦を強いられる。

​一時撤退を決断した次郎吉は、花櫛と天丸の妖染の能力を借り戦線離脱するが、その時に彼は花櫛の「女郎蜘蛛桃花艶舞」の射程内にいた鈍鉄常も回収したのだった。

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次郎吉たちとは離れた場所にいたため取り残されてしまった羽田野千歳。

​鈴鹿氏の家臣たちに捕えられ、妖染を剥がれながら、彼は無気力に考えていた。

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しかしそんな彼の思考を遮るように、男たちの悲鳴と鈴鹿氏の驚愕の声が響いた。

 

羽田野氏が顔をあえた先にいたのは、倒れ伏す鈴鹿氏の家臣たちと、謀反の混乱に乗じて逃げたと思ったはずの火鼠だった。

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そして、その火鼠たちと共に現れたのはーーーーーーー

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信じられないものを見るような彼に、「鈍鉄常」は、かつて彼の主君になるはずだった男はこう言った。

「先に、無礼を詫びておきます。千歳様

 

 

……いや、雛千代」

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