【「座敷童幸九橘」編】
大名・立花幸善(たちばな こうぜん)が統治する国。
賑やかな町をさらに賑わすのは、自称天下無双の大泥棒「火鼠次郎吉(ひねずみじろきち)」だった。
赤い衣を身に纏い、町の商人や武家の屋敷に盗みに入っては騒ぎを起こす一種の町の名物だ。
次郎吉はその日も、いつも通りめぼしい商人の屋敷に盗みに入り派手に暴れまわっては、屋敷の用心棒に追われていた。
その様子を遠くから見る少女が一人。
「天下無双の大泥棒!火鼠次郎吉様たぁ俺のことだァー!!よぉく覚えとけ!!」
次郎吉は群がる用心棒たちを華麗に躱し、走り抜けた屋根の上から飛び降りる。
しかしその先には1人の少女が。躱しきれずに次郎吉はその少女の上に落下した。
痛む身体をさすりながら起き上がる次郎吉と少女。
「悪りぃ悪りぃ」とそのまま立ち去ろうとする次郎吉の袖をぐんっと引っ張ったのは
少女だった。
「火鼠次郎吉さん…!!あなたを探していたんです…!!」
絹と名乗ったその少女は、大名・立花に奪われてしまったあるものを、城から盗み出してほしいのだという。
自分には関係ないと断る次郎吉だったが、
立花氏は多数の妖染を所有しているという話を聞き、探し物があるという彼は
盗みに入ることを決めた。
そこにお絹が同行し、お絹自身妖染を探すということで話がついたのだった。
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その後、泥棒とは思えぬ大胆な門破り、城の人間をちぎっては投げちぎっては投げ
を繰り返し強引に城内を進んでいく次郎吉たちだったが、そこに現れたのは
立花幸善が有する忍隊の忍頭・風神大和(かぜかみ やまと)だった。
応戦する次郎吉だったが、明らかに大和に押されている様子を見て、
お絹は無理矢理に次郎吉をひっぱり一時撤退を提案する。
もちろん次郎吉は飲まなかったが、揉みくちゃになりながら大和から逃げている
最中、偶然廊下の隠し扉を開いてしまい、2人はその中に転がり落ちていった。
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2人が落ちた先は、城の中の隠し宝物庫だった。
骨董品、調度品、様々な品が並ぶ宝物庫の様子を見たお絹と次郎吉は、
互いの目当ての妖染があるかもしれないと、中を物色し始めるがーー
雪間と名乗ったその者は、雪女の母と人間の父の間に生まれた半妖だった。
妖染にするために、母と共にこの城に連れてこられたという。
雪間を連れてここから出ることにした次郎吉とお絹。
だが、宝物庫を出ようとした矢先、隠し扉を突き止めた先程の忍・大和の
襲撃を受ける。
しかし、雪間について知らされていなかった彼は、お絹から雪間の話を聞いて動揺する。
その隙をついて次郎吉は大和に一撃を喰らわし宝物庫から脱出に成功する。
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次郎吉たちが宝物庫から出ていった後、大和は一人考える。
火鼠が言っていたことは本当なのか。
自分が仕えている主は、我欲のために他者の命を使いつぶすような人間だったのか。
その後次郎吉たちと入れ違いになるように、立花の家臣数名がばたばたと宝物庫に
入ってきた。
宝物庫の中で何かを探すように歩き回った彼らは、大和にこう問うた。
「おい、風神の!アレはどうした!どこにいった!?」
「ここに捕えていた半妖の子供はどこにいったと聞いている!?」
その言葉は、大和の決意を固めるのに十分だった。
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雪間から「座敷童幸九橘」が立花幸善の手元にあると聞いた次郎吉とお絹の2人は、立花のいる城の本丸を目指し歩みを進める。
だが、そこに新たな刺客が立ちはだかる。
立花幸善が私的に雇った用心棒、水浦長雨(みうら ながさめ)と
大木田清杉(おおきだ きよすぎ)である。
用心棒2人と戦闘になるかと思いきや、雪間が足止めを申し出、
次郎吉とお絹は先に行くように促す。
止めるお絹だったが、何かを悟った次郎吉は素直に雪間に任せ本丸へと急いだ。
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決戦
水浦長雨 対 雪間
大木田清杉 対 風神大和
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雪間VS水浦長雨
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風神大和VS大木田清杉
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そしてその頃、ついに立花幸善のもとにたどり着いた次郎吉とお絹。
「座敷童幸九橘」を纏った立花と対峙することになるが、お絹の姿を見て驚愕した様子の立花から明かされたのはーーーーーーー
決戦
次郎吉 対 立花幸善
立花幸善の妖染「針女赤墨千本(はりおんなあかすみせんぼん)」の攻撃からお絹を守るために自らの妖染をお絹に着せ、戦いに身を投じる次郎吉。
「妖染(これ)は次郎吉さんが着ていてください!私のことはいいですから…!
だって私は、もう…」
そう訴えるお絹に、次郎吉は自らの妖染を着せたままにした。
たとえ命がすでに終わっていたとしても、お絹の魂は間違いなく、今
自分の前にあるからと。
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次郎吉は、現代に生き残った数少ない本物の妖怪だった。
本来の「火鼠」としての姿に戻り、激闘の末立花幸善を倒した次郎吉は、
立花氏から「座敷童幸九橘」をはぎ取り、お絹に渡してやった。
橘色の妖染の裾には、お絹の着物と同じ、紅色の柄が入っていた。
それは、妖染を奪われた際にお絹とともに殺された、彼女の恋人・佐々乃介の血
だった。
それを見たお絹は言った。
「…あぁ、佐々乃介さん。こんなところにいらしたんですね…
私、ちゃんと、大切なモノを…家族を…取り戻しましたよ」
「座敷童幸九橘」編、これにて終幕。
そしてーーーーーーーー
「火鼠次郎吉」ここに開幕ーーーーー!!
~続~